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かたりべ



短編集、かたりべの第一弾です。
何を血迷ったかファンタジックな悲恋でございます。


結構長いお話になっておりますので暇なときにでもどうぞ!



暗い、暗い森の奥。
その中にひっそりとたたずむ洋館には、病に倒れたとある国王の娘がいた。

その娘はなにもほしがらなかった。
流れ行く年月をただ、空を見上げてすごした彼女はあるとき訪ねてきた王にこういったそうだ。

「いろんな話が聞きたいわ。多くの話を知るものを頂戴」

父は、城にたくさんの語り部を集めた。

あるものは歌で、
あるものは踊りで、
あるものは音楽で、
さまざまな言葉をつむいだ。

そして、少女がほしがったのはこの国でもっとも多くの死を送ったものだった。

その男は死刑囚を死刑執行場まで連れて行く男。
彼は、仕事とは関係なく、死刑執行前の囚人を訪ね、遺言を届ける代償に、罪人の一番の思い出を語らせたそうだ。
その男はそうして80年も死刑囚の話を聞いた。




「ご機嫌麗しゅう、お嬢さん」

白髪に青い瞳の美しい白人男性は恭しく少女に礼をする。見た目はだいたい、21歳くらいであろうか。
よくできた人形の笑みを浮かべた男は用意してあった椅子に腰掛け、少女と向き合う。

対する少女は何も言わない。冷めた紅茶を一瞥し男に視線をやる。
鋭く、酷く無気力な視線を受けて男はおどけたように両手を上げた。

「そのように急かさずともわかっておりますよ。
そうですね、今夜はどのような噺をいたしましょうか」

椅子に深く腰掛けて彼は笑みをよりいっそう深くする。
少女は何も言わないが代わりにメイドから男に一枚の絵画が渡された。

クレヨンで塗りたくられた画用紙に書かれたのは黒い人影を抱いてうなだれる青い人魚。
その周りは赤で彩られており、二つの存在が強調されている。
男はその絵をじっと見たあと、机の上に置いて冷めた紅茶をすすり、再び少女に向き直った。

「わかりました、今日は40年前に聞いた、山賊の話をしましょう」


男はまた、笑った。






人魚、というのをご存知だろうか。
上半身は人、下半身は魚という魔物の一種だ。
岩の上に座って歌い嵐を呼んだり、人をだまして溺死させたりすることもあるらしい。
しかし、その目撃情報の大抵はジュゴンか何かと見間違えられただけであり、その存在は定かではない。

しかし、40年前に死刑になった山賊の頭領はとある湖にいた人魚に会ったという。
男の遺言は瓶詰めの手紙であった。
火をつけたペンで紙を焦がしながら書いた手紙をビンに入れ、錘をつけて男に渡したという。


その山賊は捕まって死刑が確定する、8年前に人魚に会ったらしい。

「なんの変哲もない湖で休憩してると歌がどこからともなく聞こえてきてよ。
湖に潜ってみると水色の髪した、きれいな女が水ん中だってのにびっくりする位きれいな声で歌ってたんだ。
潜ってきた俺を見て自分の住処が荒らされたと勘違いしたんだろうな。
顔真っ赤にして逃げちまった。」

苦笑いをしながら筆を走らせる赤い髪の山賊は、当時のことを鮮明に覚えているようで懐かしむようにそう語った。
字は予想以上に正しく、綺麗であり、山賊だというのに学があるのがおかしかった。

そのことについて男が問うと「奪ってきた本を読むためにって先代が教えてくれたんだ」と山賊は答えた。
それからしばらく筆を走らせていたが二枚目の紙に進むとき、ふとまた口を開いた。

「それからどうもその女のことが気になって仕方なくてな。
そのときちょうど、金に赤い宝石のついた首飾りが手に入ったんだ。金ってのは錆びにくいものだって聞いてたんでな。
こいつはちょうどいいと思って、あの女の所にいったんだ。

そしたら、俺が潜る前にその女が湖から顔出して、綺麗な貝殻を差し出してきてよ。
驚いたさ、奪うばかりでもらうなんて知らなかったし、なによりその女の手には薄い青色の鱗があった。
それでも俺はその女が気に入ってな。貝殻を受け取って、金の首飾りをあいつの首にかけてやったんだ」

山賊はそういって、思い出の品だという貝殻を見せてきた。
薄紅色の貝殻はヒビひとつ入っておらず余程大切にされてきたことがうかがえた。

「それから、何度も会って。
あいつからは歌を聞かせてもらって俺はいろんなところに言ったときの土産話しをして・・・・・・。
それが、近隣の猟師に見つかってよ。
それでここにつれてこられた」

じゃらり、と足枷がなるけれど先に繋がった杭はびくともしない。
まるで、山賊の心境を表しているようでなんともむなしい。
思い人に会いに行くことさえできないのだ。

男は何もいわない。
ただ、その人形のように美しい笑みをたたえて山賊の話を聞いているだけだ。

「死ぬ前に、あいつにサヨナラいいてえんだ。こいつを頼む」

火でかかれた手紙はなんと18枚に及んだ。
ここまで長い遺言は初めてだ。そういって男は笑って見せた。
すると、山賊は刺青の入った顔で自嘲気味に笑った。

「あいつには、いろんなものを貰ったんだ。
山賊の俺にはあったかすぎて、その暖かさがほしくもなった。
でも、もう会えねぇんだ。
本当に欲しいものってのは、奪ってばかりの薄汚れた手じゃ手に入れることはできなかったらしいな」

「いやはや、泣ける話だったよ。ありがとう」

処刑の時間は12:47。
山賊が最初に盗みを犯した時間である。

死刑場の鐘が鳴る、うるさいほどに、悲しいほどに。
手渡されたメッセージボトルは通常のそれとは異なり、錘の重さを差し引いてもとても重たく感じられた。

山賊は男がそれを受け取ったのを確認すると両手を差し出した。
男はその両手に手枷をはめ、山賊を立たせると、扉を開く。

「さぁ、そろそろだ。いい話だったよ、サディ・アドネイル」



男の仕事は、死刑囚をそこまで送ること。
見届ける必要はないのだ。

男は送り届けたあと、すぐそこを離れたが、そこにいた民衆の一人はこう語ったそうだ。

あの男が首を切られて死ぬ前に、どこからか歌が聞こえた。
とても綺麗な声だったが、泣きながら歌っていたそうだ。

その歌は男が死ぬと同時に止み、すぐさま嵐が来た。
吹き荒れる暴風雨とともに高波は海のそばにあった死刑執行場を一時的に覆った。
その場にいた全員が目を覆っていたが、飛び散る血が目に入らないように、とゴーグルをしていた執行人だけには見えたものがあった。
首のない死体と頭を抱き、泣きながら帰っていく人魚。

その首元にはさびひとつない金の首飾りが光っていたそうだ。






「今日の話は以上ですよ。そろそろ眠ってはどうです、お嬢さん」
「今日も期待通りの話だったわ、ありがとう」

少女の返事に機嫌を良くしたのか男は再び笑みをいっそう深くする。
男は椅子を立つと再び一礼し、部屋を出た。

少女は本を開くと、男が話していった内容をすべて記録したことを確認し、そばにあったベッドに入った。
明日はどんな絵を描こう。
そうだ、とても幸せな絵を描こう。

もう自分の表情はもう動かないなど、そんなはずはない。
心のそこから泣けるような話がほしい。
心のそこから笑えるような話がほしい。

そうすれば、きっと顔に出てくるはずだ。
この病も治るはずなのだ。
少女は眠る。

変わらぬ表情を憂い、明日こそはと願いながら。




あとがき・・・・・・

人魚と山賊の話。
男の身の上、少女の病に軽く触れてみました。

どうでもいいですが、人魚はもともと地中海沿岸部にいた人魚です。
湖はなんとなくで来たら山賊がいて一目惚れしたのでしばらくそこに定住。
よくわからないけど山賊が連れて行かれた。
猟師のうわさを小耳に挟んだら、海辺の処刑場で処刑されるらしい。
で海に戻って歌ってました。復讐とお別れの意を込めて。

あと、男はトルコ人です。
サディ・アドネイルはヘタリアのトルコさんの人名「サディク・アドナン」をもじってつけました。


いかがでしたでしょうか?けっこうガチでかいたので反応が怖いです。
できれば、感想くださいな。
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プロフィール

紫

Author:紫
のんびりブログやってます!
更新速度は亀なみですが、よろしくお願いします!

スランプを脱却したものの底辺である文章力に変わりは無く。それでも楽しく書けるようになりました!絵のほうは着々と三成さん漫画アップ準備中。携帯で撮影・パソコンへ転送・あっぷ!という方法をとる予定。

リンクフリーで、相互リンク大歓迎です。
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